組合設立・運営
設立手続きの概要
STEP1 設立発起人の選定
株式会社なども複数名の役員が必要ですが、小さな会社の現実としては、事業に携わっている役員は社長だけで、あとは名前だけの身内で固めたりする例も少なくありません。
しかし、事業協同組合では、そのような組織構成は認められていません。組合法の規定通り、4人以上の設立発起人が必要です。
したがって、事業協同組合の設立には、4人以上の事業者が揃っていることが前提となります。
設立発起人の資格
組合を設立する際に、実際に設立行為を行う者を「設立発起人」といいます。
この設立発起人になれる者は、組合が設立されたときに組合員になろうとする中小企業者(法人又は個人事業主)でなければなりません。
設立発起人の人数
設立発起人の数は4人以上でなければなりませんが、あまり多人数を設定すると、相互の意見調整に時間が掛かる他、連絡に手間が掛かり、設立手続きが遅れてしまう可能性があります。
また、4人の場合は、もしも、途中で1人でも欠けるようなことがあれば、法定数を下回ることとなり、欠員分を補充しなければ設立手続きを進めることができなくなります。
したがって、設立発起人の数は、組合の地区の広さや設立同意者数を考慮したうえで、設立手続きが円滑に進められるような人数とすることに留意する必要があります。
STEP2 設立関係書類の作成
設立発起人が集まり組合設立の意思が固まったら、設立関係書類の作成に取り掛かりましょう。
この設立関係書類は、組合設立の基本方針を表明するものであるため、中央会とも話し合いを進めながら作り上げていく必要があります。
では、作成が必要となる基本書類をみていきましょう。
定款
定款は、組合の目的、組織、活動等に関する基本的な規則であり、いわば組合の憲法ともいうべきものです。
定款の作成にあたっては、法律的な知識を必要とするので、中央会の指導を受けながら作成しましょう。
定款に記載する事項は、必要記載事項と任意記載事項に分けられます。必要記載事項は、さらに絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項に分けられます。
絶対的必要記載事項とは?
定款に必ず記載しなければならない項目で、「事業」、「名称」、「地区」、「事務所の所在地」、「組合員たる資格に関する規定」、「組合員の加入及び脱退に関する規定」、「出資一口の金額及びその払込み方法」、「経費の分担に関する規定」、「剰余金の処分及び損失の処理」、「準備金の額及び積立ての方法」、「役員の定数及びその選挙又は選任に関する規定」、「事業年度」、「公告方法」があります。
これらが漏れているものは定款として無効となります。
相対的必要記載事項とは?
定款に定めないと効力が生じない項目です。「役員任期の伸長に関する規定」などがこれに該当し、定款に記載しておかないと、その効力を発揮しませんが、定款自体は有効に成立します。
設立趣意書
組合の目的と理念を記載し、「なぜ、組合をつくるのか?」を明記するものです。設立趣意書は、組合員になろうとする者、また、組合員にしたい者に対し、設立発起人が組合の設立に同意を求めるために作成するものであるため、設立の目的及び設立の必要性を詳細に説明するとともに、組合員を取巻く現状、組合の事業及び組織の概要を示す必要があります。
事業計画書
設立にあたっては、初年度と次年度の2事業年度分を作成します。設立時は、財政面に制約があるため、現実的かつ確実な活動につなげることを考えましょう。
事業計画書の作成にあたっては、組合員の現状を把握したうえで、取扱品目や取扱数量、金額及び手数料、実施方法等をはっきりと定め、明記しておくことが必要です。
なお、事業計画書の内容が実態とかけ離れていたり、各種法令に違反している場合は、認可されないため注意が必要です。
また、次年度までの事業計画に記載しないことは、定款にも記載してはいけません。
収支予算書
収支予算書も、初年度と次年度の2事業年度分を作成します。具体的には、事業計画書の数字を落とし込んだものになりますが、事業収支と経費収支とを一本化したものを作成します。
各事業の収入は、それぞれの経済事業の経費を十分賄えるよう算定したものが望ましく、また、賦課金収入は教育情報事業賦課金収入と一般賦課金収入に区分し、それぞれの事業の経費を賄えるよう算定することが望ましいとされています。
なお、経理的基礎を欠くなど、その目的を達成することが著しく困難であると認められたときは、認可されないので客観的な視点をもって作成する必要があります。
設立同意者名簿(設立同意者が組合員たる資格を有するものであることの誓約書)
設立同意者名簿には、組合の設立に同意するすべての者を記載します。設立同意者が法人の場合は、法人名と代表者名を記載し、法人でない個人事業主の場合は、事業者個人の氏名のみを記載します。
出資口数の欄には、各設立同意者が出資引受書により引き受けた出資の口数をそれぞれ記載します。
業種の欄には、「日本標準産業分類(総務省)」等を参考に、該当する業種を記載しなければなりません。
資本金額又は出資の総額の欄には、各設立同意者の払込済金額を記載します(組合への出資額を記載しないよう注意してください)。
STEP3 所管行政庁との事前協議 ※事前協議を行わない場合もあります
設立関係書類の作成後、所管行政庁からの事前質問に回答し、事前協議に臨むことになります。なお、事前協議の日程調整等は、中央会が仲介して行います。
通常、事前協議では、所管行政庁の担当部署の職員が数名で対応し、中央会の担当者も同席します。組合側は、極力設立発起人全員が出席するようにしてください。
事前協議が行われる際は、「なぜ組合を設立したいのか」、「どのくらいの規模を考えているのか」、「どのような事業を行っていくのか」等、設立発起人全員がコメントできるように話し合っておきましょう。
STEP4 創立総会の開催
(1) 創立総会開催公告
創立総会を開催するためには、開催日の2週間前(中2週間)までに、発起人が公告・通知をする必要があります。公告する内容は、定款、創立総会の開催日時及び場所、議題、設立趣意書等です。
創立総会の開催公告は、組合の設立同意者を広く求めるとともに、創立総会の開催を知らせるための手続きであるので、省略することはできません。
(2) 創立総会の議案整理
創立総会は、組合の設立に同意する者が集まり、定款の承認、事業計画及び収支予算の設定など、組合設立に必要な事項を決定する重要な会議です。
創立総会には、次のような議案を上程する必要があるので、それぞれ資料を準備しておかなければなりません。
なお、少なくとも、「設立趣意書」、「定款」、「事業計画書」、「収支予算書」などの資料については、「創立総会開催通知」とともに事前に同意者宛に送付しておくことが望ましいです。
当日は、会場の受付に設立同意者名簿を備えおき、出席者が本人であるか、代理人であるかを必ず確認し、代理人の場合は、委任状を受け取っておく必要があります。
なお、代理人になれる者は、設立同意者の親族(6親等以内)又は常時使用する使用人及び他の設立同意者でなければならず、1人の代理人が代理できる人数は4人以内で、定款で定めた人数となっています。
委任状については、創立総会開催通知に同封してあらかじめ送付しておきましょう。
(3) 創立総会の開催
創立総会の成立には、設立同意者の半数以上の出席が必要です。これには委任状による出席も含まれるので、代理人からは必ず委任状を受け取るようにしましょう。そして、議案審議の前には、必ず出席者が定足数に達していることを告げてください。その後、設立発起人から設立の経過を発表し、議長の選任を行います。
議長は、設立発起人を含む設立同意者の中から選任しますが、議長は総会の議決に加わることができません。ただし、可否同数の場合は、議長に決定権が付与されます。
なお、創立総会では設立発起人から提出された議案を修正することができますが、定款に記載された規定のうち、「地区」及び「組合員たる資格」は修正できません。
(4) 理事会の開催
創立総会において理事が選出されたら、直ちに理事会を開催します。この理事会は、選出された理事全員が就任を承諾し、さらに理事会の開催を全員が同意した場合のみ開催することができます。さらに、監事に業務監査権限を与えている組合においては、理事に加え、監事全員の同意と出席が必要になります。
なお、創立総会当日に選出された理事(監事)が欠席していた場合には、電話にて就任の承諾を確認し、併せて理事会開催の同意を得るようにしましょう。
(5) 議事録の作成
創立総会と理事会が無事終了したら、それぞれの議事録を作成しましょう。
創立総会議事録は、創立総会において審議された議案のすべてを記載しなければなりません。この議事録は、総会に上程された議案の議決の方法及び結果を示す大切なものであり、設立認可申請に必要不可欠なものですので、総会終了後直ちに作成しましょう。
また、理事会議事録は、代表権を有する者の資格を証明する書面として、設立登記申請の添付書類として必要不可欠なものであり、出席した理事(監事)は、これに記名押印しなければなりません。
なお、議事録には、開催日時・場所、経過の要領及びその結果、議長の氏名などの他、議事録を誰が作成したか明らかにするため、議事録作成の職務を行った発起人の氏名を記載しなければなりません。
STEP5 設立認可申請
創立総会が無事終了したら、次は設立認可申請を行います。設立発起人は、速やかに設立認可申請に必要な添付書類を作成し、これを所管行政庁に提出して、設立の認可を受けなければなりません。
設立認可申請書及び添付書類の作成にあたっては、誤字脱字がないようにするとともに、各書類の間に時系列の矛盾や不整合がないよう留意する必要があります。
中小企業等協同組合設立認可申請書
設立認可申請書は、発起人全員の連名によることとされていますが、他の設立発起人の委任を得て設立発起人代表1名の申請でも構いません。
なお、設立発起人が法人の場合には法人名とともに代表者名を記載し、代表者印を押印することが必要です。
委任状
組合の設立認可申請の手続きにあたり、発起人代表制をとる場合には、発起人代表以外の発起人は発起人代表に委任状を提出しなければなりません。
設立同意書及び出資引受書
設立同意書及び出資引受書は、設立される組合に対して、1口以上の出資をして組合に加入することを意思表示するものです。
設立同意者が法人の場合には、法人名及び代表者名を記載し、代表者印を必ず押印します。
資本金の額は、払込済の資本金額を記入しなければなりません。なお、個人事業主の場合は、資本金額の記入は不要です。
従業員数は、法人である事業者でも、個人事業者でも記入することが必要です。ただし、ここでいう従業員とは、常時使用する従業員のことであり、臨時雇用の従業員、季節労働者等は含まれないので注意してください。
役員名簿
役員名簿に記載する住所及び電話番号は、選出された役員個人の住所及び電話番号を記載してください。
理事及び監事に選出された者が法人の役員である場合には、法人名とその役職名を記載しなければなりませんが、法人格を持たない個人事業主の場合は記載不要です。
なお、理事及び監事が組合員の役員以外から選出された場合には、法人名等に併せて「員外理事」、「員外監事」と記入します。
理事(監事)就任承諾書
組合と理事及び監事の関係は「委任契約」ですから、理事・監事に選出された者は、組合に対しその就任の承諾を書面(就任承諾書)によって明確にし、記載する住所は理事又は監事本人の個人住所としなければなりません。
また、理事が提出する場合は「理事就任承諾書」と明記し、監事が提出する場合は「監事就任承諾書」と明記します。
なお、創立総会及び理事会議事録の記載を援用する場合は、就任承諾書を添付する必要はありません。
創立総会議事録
認可申請書に添付する議事録は、原本又は謄本の形式で作成したものを添付します。なお、謄本の場合は「原本と相違ない」旨の発起人代表(設立発起人全員で申請する場合は全員)の証明が必要です。
理事会議事録
理事会の議事録は、理事会終了後直ちに作成し、理事会において審議された議案ごとの賛否の議決権数及び可決、否決の別、並びに賛成した理事の氏名及び反対した理事の氏名等の議案をすべて記載する必要があります。
なお、監事が理事会に出席した場合は、出席理事に加え、監事の記名押印も必要となります。
印鑑証明書 ※各発起人の印鑑証明書3部
設立発起人全員の印鑑証明書(3か月以内に発行されたもの)を添付します。
発起人が法人の場合は、代表者印の印鑑証明書を準備し、発起人が個人事業主の場合は、個人(実印)の印鑑証明書を準備してください。
STEP6 設立発起人から理事への引継ぎ
設立認可申請後、所管行政庁から認可書が届きますが、これで設立事務のすべてが終わったわけではありません。
設立発起人は、設立認可後の事務手続きを創立総会で選出された理事に引き継ぎます。
なお、理事が行う設立手続きは、以下のとおりです。
1.設立同意者から出資金を徴収する
2.法務局で設立登記申請を行う
3.税務署等へ法人設立届出を行う
4.公正取引員会に対する届出を行う ※組合員に大企業がいる場合
STEP7 設立登記申請
設立同意者の出資払込みが完了したら、法務局に設立登記申請を行います。設立登記申請は、組合の代表理事又はその代理人が行わなければなりません(代理人の場合は委任状を必要とします)。
設立登記申請にあたっては、出資金の「全額払込制」をとる組合は出資全額の払込みが完了した後に、「分割払込制」をとる組合は第1回の出資払込み完了した後に、それぞれ完了の日の翌日から2週間以内に所管行政庁からの設立認可書を添えて、主たる事務所を管轄する法務局において登記申請を行う必要があります。
また、従たる事務所を有する組合では、主たる事務所の所在地で登記が済んだ後2週間以内に登記簿謄本を添えて、従たる事務所を管轄する法務局において登記しなければなりません。
なお、設立登記申請をする場合、組合の代表理事は、その使用する印鑑(代表理事の印)を同時に法務局へ届け出なければなりません。その場合、代表理事は、使用する個人(実印)の印鑑証明書を添付する必要があります。
設立登記申請に必要な書類
1.事業協同組合設立登記申請書
2.定款
3.創立総会議事録
4.理事会議事録
5.代表理事の就任承諾書 ※創立総会及び理事会議事録の記載を援用する場合は不要
6.出資の総口数を証する書面 ※設立同意書及び出資引受書
7.出資の払込みのあったことを証する書面 ※出資払込領収書
8.設立認可書 ※所管行政庁より受領
9.委任状 ※代理人が申請する場合は必要
10.登記事項一覧 ※登記すべき事項をテキストファイルでCD-R格納
11.印鑑(改印)届書
12.代表理事個人(実印)の印鑑証明書
これらの必要書類に加え、実際に登記すべき事項を記録したCD-Rを法務局に提出します。
登記事項一覧
1.名称
2.主たる事務所
3.目的等(事業)
4.役員に関する事項(代表権を有する者の資格、住所及び氏名)
5.公告の方法
6.出資1口の金額
7.出資の総口数
8.払込済出資総額
9.出資払込みの方法
10.地区
11.登記記録に関する事項
STEP8 税務署等への届出
設立登記が完了すると組合が成立したこととなりますが、さらに所轄税務署に法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書等を提出するとともに、都道府県の税事務所、市町村の税務課に事業開始等申告書を提出するなどの手続きが必要です。
認可行政庁に対する成立届
設立登記完了後、認可行政庁に対し、登記事項証明書を添えて提出します。
税務署等に対する法人設立届出
(1) 法人設立届出
組合を設立した場合に、設立の日から2か月以内に事務所の所在地を管轄する税務署に「法人設立届出書」を提出しなければなりません。
なお、届出の際は、「定款」、「設立趣意書」、「設立時の貸借対照表」等も併せて添付する必要があります。
(2) 青色申告の承認申請
法人税の確定申告を青色申告書によって提出しようとする場合には、設立の日から3か月を経過した日と事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日までに事務所の所在地を管轄する税務署長に「青色申告の承認申請書」を提出しなければなりません。
(3) 給与支払事務所等の開設届出
組合で専従職員等に給与等を支払う場合には開設の日から1か月以内に事務所の所在地を管轄する税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出しなければなりません。なお、従業員を雇用する場合は、社会保険等の手続きも必要です。
(4) 法人等設立(設置)申告書
組合が成立し、事業を開始した場合には、当該都道府県及び市町村の税条例により、所管の税事務所に「定款」、「登記事項証明書」を添付して「法人等設立(設置)申告書」を提出しなければなりません。
(5) その他
以上の他、組合によっては「減価償却資産の償却方法の届出書」、「棚卸資産の評価方法の届出書」等を組合の事務所の所在地を管轄する税務署長に提出することが必要です。
公正取引委員会に対する届出
組合員のうちに資本金の総額が3億円(小売業又はサービス業は5千万円、卸売業は1億円)を超え、さらに常時使用する従業員の数が300人(小売業は50人、卸売業又はサービス業は100人)を超える法人がいる場合、又は法人でなく常時使用する従業員が300人(小売業は50人、卸売業又はサービス業は100人)を超える者がいる場合は、組合成立後30日以内にその旨を公正取引委員会に届け出なければなりません。
届出には「中小企業等協同組合法第7条第3頂の規定による届出書」に、①組合の定款、②実施している事業に関する規約、③届出の原因となった組合員の最終の貸借対照表及び損益計算書を添付する必要があります。
製造業その他
資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業
資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業
資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業
資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
上記にあげた中小企業の定義は、中小企業政策における基本的な政策対象の範囲を定めた「原則」であり、法律や制度によって「中小企業」として扱われている範囲が異なることがあります。